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写真メモ

写真を撮ると忘れる?研究から考える写真と記憶の関係

覚える約3分公開

執筆・運営:Muscle Industry

旅行から帰ると、写真は何百枚もあるのに、どんな説明を聞いたかは思い出せない。一方で、撮ろうと構図を考えた景色はよく覚えている。この二つの感覚は、必ずしも矛盾していません。

写真と記憶の研究を読むときには、「撮ったかどうか」だけでなく、何を撮ったか、何へ注意を向けたか、後で何を問われたかを見る必要があります。

撮った対象を、覚えていなかった研究

Henkelの美術館での研究では、参加者は展示物を観察するか、撮影するよう指示されました。対象全体を撮った場合、見るだけの場合より、対象や細部、展示位置の記憶が少なくなりました。一方、特定部分を拡大して撮る条件では、その低下が見られませんでした。資料1

この結果は「カメラを使うと常に記憶が悪くなる」とは読めません。同じ論文の中でも撮り方による違いがあります。また、指示された対象を撮る美術館の課題は、日常で必要な情報を自分で選んで残す場面と同一ではありません。

自分で撮るものを選ぶと、違う結果もある

Baraschらは、参加者が自由に写真を撮る状況を含めて、視覚と聴覚の記憶を調べました。写真を見返さなくても、撮影する人の視覚情報の認識がよくなる一方、音声情報の記憶は悪くなる傾向が報告されています。資料2

見る情報に注意が向くことと、聞く情報を覚えていることは同じではありません。写真が記憶全体を一つの方向へ動かすと捉えるより、注意の配分が変わる可能性を考えるほうが、この結果に合っています。

Henkelの美術館研究では全体撮影と部分の拡大で結果が異なり、Baraschらの研究では視覚と聴覚の記憶で結果が異なりました。
撮り方と、測った記憶をそろえて読む

各研究内の撮影しない条件との比較を要約しています。条件も課題も異なるため、研究間の効果の大きさや撮り方の順位は比較できません。写真を見ずに答える記憶と、写真を開いて参照する行動も別です。

出典・参考:Henkel(2014)Baraschほか(2017)
確認日:

図の内容を文章で読む
  1. Henkel(2014):美術館で指示された対象全体を撮影すると、観察だけの場合より対象・細部・位置の記憶が低下。部分を拡大する条件では低下が見られなかった。
  2. Baraschほか(2017):自由に撮影できる条件では、撮影できない条件より視覚情報の認識がよく、聴覚情報の記憶は悪くなる傾向。写真の見返しは行わない。
  3. 結果を読むときは、撮影の選択、撮影方法、問われた記憶、写真を参照できるかを確認する。

二つの研究の「違い」を読む

見比べる観点 確認する内容
撮影の選択 実験者の指示か、自分で対象を選んだか
撮影方法 全体を撮ったか、特定部分へ注意を向けたか
記憶の内容 見た細部か、場所か、聞いた説明か
後の利用 写真を見ずに答えるか、写真を参照するか

条件が違う研究を、単純に「前の研究が間違いだった」と並べることはできません。どちらも、一定の条件で起きた結果を知る材料です。

枚数についても同様です。SoaresとStormの研究では、絵画を複数回撮る条件でも、撮影しない条件より細部の記憶が低下しました。資料3 「たくさん撮れば注意深くなって解決する」という普遍的な方法も示されていません。

体験の記憶と、参照用の写真を分ける

展示の説明を聞いて理解したいなら、撮る操作に集中して音声を聞き逃していないか意識してみます。撮影が許される場所でも、撮る時間と見る・聞く時間を分けるのは一つの工夫です。この手順自体の効果を上の研究が検証したわけではありません。

一方、バス時刻表を撮る目的は、数字をすべて暗記することとは限りません。翌日その写真を開き、正しい列を読めればよい場合もあります。写真を見ずに受ける記憶テストと、外部の記録を参照して用事を済ませることは、別の評価です。

日常の写真メモでは、読める解像度、行き先や曜日などの条件、保存した場所を確認することに意味があります。「撮ったから覚えているはず」と考える必要はありません。

撮影後に、何へ使うかを一つ決める

写真を一枚選び、「これで後から何を確かめるのか」を言葉にしてみます。店の営業時間なのか、ごみの品目なのか。それが写っていなければ撮り直し、写っていても場所が分からなければメモを添えます。

研究は写真のよしあしを一言で決めるためというより、自分の撮影目的を見直す材料になります。写真を使って何をしたいかが決まると、残す範囲や見返し方も選びやすくなります。

参考文献・資料

参照確認日:2026-09-05。研究の対象や条件は本文と各資料でご確認ください。

  1. 原著論文Henkel(2014)Point-and-shoot memories — the influence of taking photos on memory for a museum tour

    美術館で対象を見る条件と指示に従って撮影する条件を比較。全体撮影と部分を拡大する撮影では結果が異なりました。

  2. 原著論文Baraschほか(2017)Photographic Memory — The Effects of Volitional Photo Taking on Memory for Visual and Auditory Aspects of an Experience

    自由に写真を撮る状況を含む研究。視覚と聴覚の情報について異なる結果を報告しています。

  3. 原著論文Soares & Storm(2022)Does taking multiple photos lead to a photo-taking-impairment effect?

    絵画を1回または5回撮る条件などを比較。枚数を増やせば記憶低下がなくなるとは限らないことを示しています。